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    止む

    • 2010.11.19 Friday
    • 19:41


    「生まれ変わったら、何になりたい」

    きみが不意に云った。
    ぼくに尋ねたというよりは、まるで独り言のように。

    「生まれ変わったら、何になりたい」

    こんどはぼくの方向に首を回して云った。
    ぼくはいつものように笑顔を作る。

    「ぼくは生まれ変わりたくない」

    「きみは生まれ変わりたくないの」

    「すくなくとも、人間には」

    ぼくは笑う。
    きみは笑わない。
    ぼくは、笑う。

    「じゃあ、何にだったら生まれても良いの」

    「飼い猫」

    「何故」

    「家の中で何も知らずに死んでゆけるから」

    「病んでいるね」

    「止んでいるんだよ」と、ぼくは笑う。

    「じゃあきみは、生まれ変わったら何になりたい」

    ぼくはきみに聞き返す。
    あのいやみな笑みを顔にくっつけたまま。

    「わたしは、きみになりたいな」

    きみの声でぼくは笑った。
    きみは笑わない。
    ぼくは訊く。

    「何故」

    「きみならば、何も知らない振りをして、そうやって笑っていられるから」

    「止んでいるね」

    「病んでいるんだよ」と、きみは笑わなかった。

    ぼくは笑わないきみの横顔が、夕日に染まるのを見て、
    またひとつ、笑った。
    きみはやっぱり、笑わなかった。


    ●●●●●

    何ってことも無いんですがね。
    何ってことも無い会話を。
    云いたいこともなければ、
    表現したいことがあったわけでもないけれど
    ただ、ただ、会話を。


    主義主張

    • 2010.10.22 Friday
    • 23:40


    無闇な個人主義は協調から生じる安心を取り除いただけで終わった気がするんだ。
    だれかと同じであるということは
    割と安心感を与え得る材料となっていたと思うんだよ。
    でもそれを良しとしない風潮のせいで
    その時代に生きた子供たちから
    どう生きていけばよいのかという
    お手本的なものも全て奪ったんじゃないかな。
    たしかにだれかと同じでなくてはいけないという団体としてのみ個人を扱うのは
    わたしだって抵抗がある。
    それは認める。
    たしかに個人を尊重するというのはとても大事だと思うからね、
    しかしだよ
    しかし、だれかと同じであってはいけないというわけでは決してない。
    違うかい。
    まあこうして社会生活不適合者のレッテルを張られたわたしがいうのでは
    ただの負け犬の遠吠えと取られても仕方がない言い分ではあるかもしれないが、
    まあ、それはそれ、きみたちの大事とする個人主義で育った
    個人の主張として捕らえてくれればいいよ。

    それだけまくし立てるように云って
    彼女はまた、分厚い革表紙の本を開き、読書を再開した。

    無題

    • 2010.10.21 Thursday
    • 23:48
    何処へ行こうか。
    今さら、そんなこと
    ぼくはただ
    ポラリス
    と笑う。
    きみの手はひどく冷たい。

    読書感想文

    • 2010.09.13 Monday
    • 22:37
     
    「ん?何読んでるの?」

    彼女はぼくの手元を覗き込みながら云った。

    「『変身』」

    「おう。見事に暗いね、自分の立ち居地を存分に弁えてるね。ちなみにそれ、面白いの?」

    僕は返答に詰まる。基本的に本を読む際、面白いか面白くないかという基準を設けて読んでいないのだ。少々考えた末、苦手とするところの「自分の思想をまとめた形で他人に伝える」という行為から離れ、何とでも云える客観論を持ち出すことにした。姑息な手段であることは己ながら百も承知なので悪しからず。

    「百年近く前に書かれたものが、廃れることなく現代に至って尚多くの人に読み継がれている、ってことは面白いんだろうね」

    「逃げたね」

    「逃げたよ」

    お見通しだ。まったくもって無様であることこの上ない。まあ、こいつ相手に格好つけたって何にもならないのだが。

    「で、ついでに云うならば、ジャンルは?」

    「ジャンルって、お前も読んだことあるだろ」

    「読んだけど?」

    だから何?という顔つき。彼女の十八番である。ちょっと苛っとする。
    ぼくはそれから少し楽しくなる。彼女の大きな目に照準を合わせ、できるだけ挑戦的な笑顔を作って答える。

    「ホラー、だね」

    その答えを聞いて彼女も、状況がすこし愉快になってきたことに気がつく。

    「なるほど、ホラーか。文章を分類する際に簡単に片付けることができる『哲学的』という言葉があるのにも関わらず、君がわざわざホラーという単語を選んだ意図は?」

    「恐怖感」

    「突然虫になるって謂うシュールな状況が恐怖を与えるってことじゃないよね」

    「さすがにぼくもそこまで莫迦じゃない」

    身体の恐ろしい変化は、もちろん強いインパクトをもってして読後感を支配するだろう。しかし本当に恐ろしいのはそこではない。
    本当に恐ろしいのは自身の外見の変化が周囲を如何に変えたかということ。
    自分に対する態度の変化のことを云っているわけではない。
    周囲の状態が、心理的な段階が変化したということ。
    つまり、周囲が、如何に幸せになってしまったかと、いうこと。

    「日々せっせと働いて、自分が幸せにしていたつもりだった家族が、自分がいなくなったときに、本当の幸せを手に入れてしまったという事実」

    虫になる必要なんてのは、演出のひとつだってすら云える気がするね。ぼくは嘯くように云って括った。
    彼女は、ぼくをしばらく見つめてから、にやり、とわらって、

    「ふーん」

    と云った。
    この顔も、少し苛っとする。


    ★ ★ ★

    ありきたりの感想文だけれど。


    創作文章

    • 2010.08.15 Sunday
    • 22:35
    「信じられない、常識的に見て云うがね、君は少々、おかしい」
    先生は、いきりつ云った。落ち着いて云ってくれても構わないのに、勢い込んで僕にそう云った。
    「そうでしょうか。そうですね、そうかもしれません。先生が僕を変だと云うのに於いて、何故そんなに興奮して喋られるのかすらも僕には分からないのですから」
    興奮などしているものか、と先生は云ったがその唇はやはり、怒りか緊張か僕には分からない何かの感情にふるえていた。
    「それに私は勝手な偏見で君をおかしいと云った訳ではない。飽くまでも常識的に見て、と云っているのだよ」
    「常識的にですか」
    「ああ。常識的に見て、だ」
    常識常識常識。
    常識、ねぇ。
    では、先生……
    「常識とは、一体何なのでしょうか」
    僕がそう云うと、先生はオカシナヤツが反論して来たとでも思ったのか、一層声を高くして僕の問いに応じた。
    「常識は常識だ。何も彼も無い」
    「先生は、偏見ではなく常識的に見て、とおっしゃった」
    「いかにも」
    これはどういうことだ。
    僕はいよいよ分からなくなる、確認しなくては、目の前の常識を知っているという人物に、助けを乞う。

    「すみません先生、一つお聞きしても」
    何だ、と素っ気ない返答がある。僕は分からなくなっている頭を無理矢理回転させ、言葉を選び先生へわたす。
    「先生、の常識から見て、かのアインシュタインをどの様に思われますか」
    「…尊敬、に値する人物であると」
    「……常識、とは」
    「なんだね、ボソボソと。はっきり云いなさい」


    「……常識とは十八歳までに得た偏見のコレクションのことを言う」


    「アインシュタインの言葉です。」

    僕は云った。いや、「云う」と云うよりも救助信号のごとく、ただ口から音を出すのだ。
    今日こそは答えが得られるであろうか。


    「先生、先生の云う常識とは、何ですか……」


    教えてください。
    僕には分からないことの多すぎるこの世は、漠然とした恐怖と同義なのです。
    どうか、一つでも良いので、先生あなたの知識と意思のカンテラで、僕の暗闇に光をください。僕は懇願する。
    しかし、先生は黙ったきり、もう何も云わなかった。
    世界には、答えのないものが多すぎる、目の前すら見えない僕は成る可くして不安になる。
    分からないから、怖くなる。
    世界のタネも仕組みも尻尾を掴めば、僕は少し恐ろしくなくなるのだろうか。
    そう信じ、僕は今日も教えを乞う。


    ★★★★★★★★★★
    常識には流動性がある。
    常識的行動とは擬態化すること。
    或いは。

    空気の入れ替えを致します

    • 2010.06.11 Friday
    • 17:22
     
    やあ、みなさん
    室内の空気が淀んでまいりましたね
    これでは全くいけません
    はかどるものもはかどらない
    授業の途中ではありますが
    これから
    空気の入れ替えを致します
    窓際の方々少したちあがって
    窓を開けてくださいますかな
    ええ、拳四つほどで構いません
    ほらきみきみ、
    そんなに開けてはなりません
    もし風が吹いたらば
    卓の上の教科書がばらばらになってしまうでしょう
    そうそのくらいでいいんです
    さて
    窓はぜんぶ開きましたか
    開きましたね
    ではみなさん
    空気の入れ替えを致しましょう
    わたくしが
    いちにいさんと数得たら
    大きく息を吸ってください
    それからすこうしそのままでいて
    今度は大きく吐くのです
    いいですか

    いち

    にい

    さん




    語りかけの文。

    • 2010.03.13 Saturday
    • 02:17


    きみはきみの心がぐらぐらしている様を
    ただ見たまま書いているだけじゃないか
    それがきみの云う文学なのかね
    莫迦いえ
    そんなのは毛の生えた日記だ
    きみは毛むくじゃらでいて身のないそれを
    いったいどうしようと云うんだ
    きみは自分の意識すら
    統治下にないのだろう
    どれだけうろうろとすれば気がすむのだ
    それにまきこまれるぼくの身にもなりたまえよ
    きみの書くものがかろうじて文章と成り得ているわけを
    教えてやろうか
    それはきみがその思考をもっているからだよ
    つまりきみは文才があるわけでも
    取り立てて騒がれるほどの
    すぐれた思いつきを持っているわけでもないんだ
    もちろんきみはぼくのこの意見をくだらないと退け
    そのまま思考し続けることだってできる
    しかしそうする限りきみは
    その毛蟹のような嘘だらけの思考回路を
    恥も知らずに露呈し続け
    同じところを
    つながれた犬のようにぐるぐるとまわるだけになるだろう
    ある意味至福かもしれない
    確実な不変と
    未知との決別があるからだ
    ただそれは
    わかる人には
    わかるんだよ
    それではあまりに薄っぺらだ
    きみに変われといっているのではない
    今のきみには思考の変化ではなく
    身につけるものが必要だ
    最初は新聞紙でもくだらない様々
    なんだってかまわない
    その風にさらされたみっともない意識を
    どうにかして隠す覆いをさがせ
    ぐらぐらしたきみの思考のすべてを晒すことは
    最後までとっておけ
    いまのきみのやりかたは
    けして
    賢明ではない




    • 2009.12.13 Sunday
    • 22:30
     
    何も見せませんので
    何一つ私の手に届くものはありません
    何一つとして手に入りません
    何かを欲しがっていても
    何が欲しいのか分からないので
    何かをくださいと懇願することさえかないません
    何も持っていない私は
    何もかもをもっているあなたと
    何か違いますか
    何も知らない私は
    何かを求める必要もない筈なのに
    何かを求めてやまないのです



    優しさと

    • 2009.08.07 Friday
    • 01:13
     

    マザーグウスの歌声みたい
    柔らかにやさしく
    僕の首を絞めるのはだれ
    あの旋律が忘れられない
    ああ
    なんだかのどが渇いてしまったよ

    マフィン売りも
    ハンプティダンプティも
    一人としてあれほど愉快なひとはいない
    だれかが助けてくれるなんて
    そんなのは夢だって誰か教えてあげて
    いつまでも夕暮れには佇めない

    僕は否定することを嫌って
    それは同時に選択をすることすら拒否していたんだね
    何かに出会うために必要なばいばいを認めないなんて
    そんなことは不可能なのに
    どうしてもただの一歩が踏み出せないんだ
    なぜだろう
    もう声がだせないみたいだよ

    きれいなコーラスは
    僕のためには存在しないみたい
    この場所が今いる場所である以外のなにものでもないのと同じ
    未来を見ることは
    過去を振り返ることより
    よっぽど恐ろしいね





    ばいばい

    • 2009.08.01 Saturday
    • 17:51
     

    さよならな気がしたから

    きょうはもうやめにした

    ばいばいというよりも

    夕暮れがせかしていたみたいだから

    カメラなんて日が暮れれば意味がないの

    記憶のなかに

    夢かおぼろげ

    黄ばんだぼくたちの意識の中を

    今もなお

    ただひたすら泳いでいる

    それでももう

    きょうはおしまい

    あしたに続いているのだから

    それでいたっていいでしょう

    だからもう

    きょうはもうやめにした






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