アリステアと貴緒と骨という個体

  • 2010.09.28 Tuesday
  • 23:47



ひとりひとり、なんて云うけれど、
この恐竜が生きていた頃仲間たちに何という名前で認識されていたのか
誰も知らない。

「ぼくたちが今ここで並んでこうしていることを、明日になって、幾人の人が知っているだろうか」

ぼくはつぶやく。
アリステアは何も云わない。

あしたになって、
あさってになって、
そして幾年も経ったとき、
いったい何人の人がぼくたちの今を教えてくれるかしら。
何千年も経ったとき、
きっと誰もぼくたちを個体として認識しない。

「それは、ひとつの幸せかもしれない」

アリスが云った。

「シニシズムかい」

「ニヒリズムかもよ」

ぼくたちは少し笑って、また骨になった恐竜を見た。



きみは今何処にいる―――
ぼくは今何処にいる―――



「以前何処にいようが、以降何処に行こうが今を知らなきゃ意味がない」


過程よりも結果を。
それは余りに単純で
無慈悲のように思われるけれど、
その考え方が無ければ
個性などを思いつくことも無い。


ぼくたちが人類であるという前提が無ければ
アリステアと貴緒という名前は、まったくの無意味と化す。



「とりあえず、ぼくと貴緒はここにいる。そして空腹だ、たった今ね」


違いないとぼくは笑った。

ぼくたちはそれから
恐竜と、人類と、今を構成する過去に背を向ける。

それはシニシズムでもニヒリズムでもない。
ただの一つの過程。


そして今に向き直り、
これからと今まの全てのうちのたった一日でしかない、
けれども、どの一日ともまったく同じではありえない今日の
大切な夕食について議論を交わす。


「肉がいいな」

「魚が食べたい」


アリスとぼくはそれぞれに云い、
そしてともに笑った。






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