アリステアと貴緒とつながらない空

  • 2010.09.20 Monday
  • 23:40


「高い空を見ると、
なんだか淋しいような気がする」 

アリステアは、急にそう云った。
立ち止まるでもなく、ぼくと並んで歩いているときに
ふと、そう云った。

「清しい、の間違いではなくて、」

「清清しくはあるけれどさ、やっぱり淋しいような風になるよ」

ぼくは空を改めて見やる。
澄んでいて、
高くて、
ぼくたちが遠くへ行こうと云ったあのときと同じ色の空。

「そういわれると、そうかもね」

「云われなくちゃそうでないなら、貴緒にとってはそうでないんだよ」

「そうかな」

「そうだよ」

ぼくが綺麗だと思う空を見て
アリスは淋しいと云う。
ぼくたちは歩みを止めない。

ぼくは考える。

思うことと、理解かることは別だから
いつだってぼくは考える。
自分とは明らかに違う個体の残した言葉の意味。
それが分かっても、きっとぼくの世界はちっとも変わらないだろうけれど
考えないままでは
いつまでたっても他人は霧の様にあやふやだ。

大切なのは、考えることだ。
考えて終わる、世界じゃないけれど。

「世界とか云うとまたアリスはわらうかな」

「笑いやしないよ。貴緒の中でぼくはそんなに悪人なの」

アリスは心底おかしいという風に笑った。
ぼくも笑ったけれど、おかしくはなかった。
たぶん、ただ此処にいるからという理由で笑った。

「ねえアリス、遠く離れていても同じ空の下、なんて言葉があるね」

「あるみたいだね」

「でも今、君の空は淋しくて、ぼくのそらは清しいんだよ」

「つまり、」

「つまり、空はつながっているけれど、同じ空は二つと無い」

どこまでも広くて、
どこまでも、一人きり。
どこにだってつながっているけれど、
どこを探したって、だれも居やしない。

「それって、やっぱり淋しいね」

そういってアリスはまた、笑った。
ぼくはひどく淋しくなって、もう笑わなかった。




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